学芸員が普段の仕事の中で感じたことや、日々のこぼれ話、お気に入りの展示物などを紹介します。
道悪の鬼
2013.6.25
梅雨らしい季節となりました。自然にとっては恵みの雨ですが、外出するとき傘をさして雨に濡れながら歩くことを考えると、やはり晴れの方がいいなと思ってしまいます。
先日、歴史探訪フィールドワーク「海上のタイムカプセル-御手洗」で呉市豊町へ行きました。前日までの晴天続きがうそのように当日は雨模様の天候となりました。最初の目的地である宇津神社へ到着したあたりから雨は激しくなり、午後の御手洗地区の見学も傘をさしての移動となりました。皮肉なことに見学が終わる頃になって雨が止みはじめ、広島へ帰る頃には晴れ間がのぞいていました。
その後もイベントに参加しようと思えば雨が降り、楽しみにしていた野球観戦も雨で試合中止といった具合で、すっかり“雨を呼ぶ男”になっています。
話は変わりますが、競馬の世界で“道悪(みちわる)の鬼”と称される競走馬がいます。道悪とは雨で多くの水分を含んだ馬場状態のことで、馬にとっては非常に走りにくい条件です。ところが、そういった馬場をめっぽう得意とする馬が稀にいるのです。蹄の形や走り方の違いもあるといわれますが、何よりも悪条件に負けないという強い精神力があるのでしょう。私も少し見習わなくてはいけませんね。
文化財課指導主事 牛黄蓍 豊 写真:雨の中でのフィールドワーク(呉市豊町御手洗)
「何でも駄洒落!」なコンビ
2013.6.17
ボランティア(ひろしま歴史探検隊)で大活躍のK.T氏。当課で行う普及事業などでお世話になっていますが、その本性は駄洒落ボランティアなのです。事前の打ち合わせやもの作りなどの研修に参加すると、かなりの頻度で駄洒落を言っています!かく言う私も、過去の記載歴をごらんの方にはお分かりのとおり「^-^」なわけですけれど・・・
さて、当課の普及事業では職員+ボランティアのコンビになるのですが、「K.T氏・玉置の駄洒落コンビは危険?」と思われているからなのかこれまで一度もコンビを組んだことがなく、駄洒落をやめない限り永遠に実現しないコンビと思っていました。
ところが、先月、ある学校に土器作りの指導に出向いた際、ついに禁断のコンビが実現したのです。教室という隔離空間で逃げられない児童を前に、二人は考古学の世界では定番の「土器を見てドキドキッ・・・」に始まり、「土器の底は速攻で作りましょう」等々、土器作り指導の合間に言い続けました。でも、この日の児童は結構笑ってくれたので、二人とも調子にのって、職場や家庭での日々の無反応の洗礼から脱してストレス発散?をしてしまいました (某小学校6年●組の皆様、駄洒落多すぎてすみません。二人とも一生懸命盛り上げようという気持ちですので、お許しください。)。
また、先日終了した「すごくらく」でない極楽寺山フィールドワークにもK.T氏は誘導役としてご協力いただきました。K.T氏の駄洒落に最初は「座布団5枚」とか言っていた参加者も疲労困憊になるにつれ無言・・・。めげないK.T氏は下山後に見学した「坪井将監(つぼい・しょうげん)」の力石伝説についても「その証言は信用ならない」と
最後まで臆することなく言いまくりました。
ちなみに私もイニシャルはK.Tで、もしかしたらイニシャルK.Tは駄洒落を言う人々の集まりかもしれません。こんなことを書くと、同じK.Tの当課の某学芸員だけでなく、上司K.Tからも強烈なブーイングが来る・・・かも
文化財課学芸員 玉置和弘 写真上:某小学校にて/写真中:極楽寺登山前 /写真下:極楽寺にて。手前の某職員は、駄洒落に疲れた風に見えます
宇津神社と船絵馬
2013.6.3
先日、広島の文化財講座で「三浦正幸教授と行く 海上のタイムカプセル御手洗(呉市豊町)」(6月15日実施予定)の下見に行ってきました。近くには宇津神社があります。この大崎下島は古くから海上航路の要衝として栄えた土地で、宇津神社は災難よけ・海難除けの神様として崇敬を集めてきました。宮司様に宝物殿も見せていただきました。宝物館には、神と海と人との歴史的な関係がよく分かる資料がたくさんあります。
その中に奉納された多くの船絵馬が展示されています。日本では、馬は神の乗り物として神聖視され、馬を神への献納物とする風習がありました。後には、木製や土製の馬形や、板に馬の姿を描いたものを奉納しました。時代が下ると、絵馬には祈願の内容によって、いろいろな図柄が描かれます。航海の安全を祈願する絵馬に、自分の持ち船や、乗り組んでいる船の姿も描かれ奉納されるようになります。
江戸時代には、御手洗の港に多くの北前船(北前船は弁才船の仲間です。)が入港しました。北前船は、大坂と蝦夷地を結ぶ日本海航路に就航した廻船です。大坂や瀬戸内海方面でさまざまな物資を買い込み、それを販売しながら蝦夷地に至り、そこで魚粕や鮑、昆布などの産物を買い入れ、上方に運んで販売したのです。
日本の外海を北前船で航行するのは大変な危険が伴います。特に江戸時代後半、物資の流通が盛んになると海難事故が多く発生するようになります。海が荒れ、転覆の危険が出てくると、船頭は帆を下ろし、碇(いかり)を垂らしました。時には帆柱を切り倒すこともありました。(このため運よく嵐から逃れても漂流が始まります)また、乗組員は丁髷(ちょんまげ)の髻(もとどり)を切って、神仏の加護を一心に祈りました。遭難を免れた後で、神仏との約束に従って自分の丁髷を切り、これを絵馬として奉納する風習もありました。
明治になって鉄道輸送が本格化するまで、船は物流の中心手段でした。
文化財課主任指導主事 河村直明 写真/左上:宇津神社拝殿 右下:御手洗の灯明
※「海上のタイムカプセル御手洗」の申し込みは終了しました。たくさんのご応募ありがとうございました。当選はがき、プラチナチケットですよ
アサガオと植木鉢
2013.5.28
文化財課では、昨年に引き続き、今年も江戸の園芸体験講座を実施し変化アサガオを育てています。変化アサガオについては、市の広報紙「市民と市政(5/15号)」に紹介記事が掲載されたのでご覧になられた方もいらっしゃるかもしれませんね。
先日、5回連続となる講座がスタートし、早速タネまきをおこないました。5月から11月までの7ヶ月間にわたって育てていきます。
この講座の中で、今年は植木鉢を作ってみることになりました。鉢植えは、江戸時代の園芸で主流となっていたものです。広島でも江戸時代の遺跡(広島城周辺の武家屋敷跡など)から植木鉢が出土しているので、それらを参考にして素焼きのものを作る予定です。
というわけで、どのくらいの大きさで作るか試作をしてみました。…直線的に仕上げるのは意外に難しく、出土品と比べるとちょっと大きいかも…?ちなみに写真の出土品は底の直径が8.6cmです。
今回は試作ということもありシンプルな形になりましたが、講座当日は様々な植木鉢ができるのではと期待しています。
文化財課のホームページ内(トップページのリンク 又は イベント情報掲示板)で講座や栽培の様子を載せていきますので、興味をもたれた方はぜひのぞいてみてくださいね。
文化財課学芸員 寺田香織
写真/左側が出土品の植木鉢(一部復元しています)。右側が試作した植木鉢です。
“弓矢特訓マシーン”を作ってみた!
2013.5.20
小学校6年生になると、歴史の授業がはじまります。特に原始・古代を学習する4月~5月は当課へ、小学校からの出張授業の依頼がいっぱいです。リクエストが多いのは、石器・貫頭衣・火起こし・弓矢などを試してみる古代体験。中でも弓矢体験は、TVや映画のイメージがあるのでしょう、7mほど先に置いた的に当てる気まんまんではじめるのですが・・・・大半の子供は、せいぜい4~5mひょろひょろっと飛ばすので精一杯。
聞いてみると、おもちゃの弓矢はもちろん、パチンコ(大人の遊戯のアレではない方の)で遊んだ経験もない子がほとんど。指先で強くつまんで引くという動作自体をあまりやったことが無いのです。
というわけで、課題を解決するためにこんなものを作ってみました。題して“弓矢特訓マシーン”!輪ゴムを使っているので本当の弓とは発射する原理が違いますが、基本動作は一緒。威力を弱め、矢の先端形状も工夫して、万が一当たっても怪我しないよう調節したので、大きな弓の順番が来るまで自由に練習してもらえるはずです。
簡単な構造なので、さっそく10個ほど作ってある小学校に持ち込んでみました。結果は・・・いいじゃないですか!子供たちにとっては、大きい弓ほど力が要らないので、その分技術的なことに気が配れるようです。
というか、単純に楽しいです、コレ。作った本人がはまりました。当課が参加する他のイベントにも出す予定なので、見かけたらぜひ古代の狩人気分を味わって下さい。
文化財課主任学芸員 荒川正己/写真上:弓矢体験の様子 写真下:弓矢特訓マシーン
園芸部、早くもピンチ!?
2013.5.14
4月に本格始動した文化財課園芸部の古代米づくりですが、早くもピンチが…。4月30日の種まきから一週間後の連休明け。多くの芽が土から顔を出していることを期待して出勤したのですが…残念ながらそれほど出芽していなかったのです。原因として思い当たるのは気温の低さ。ということで、4月下旬以降の日々の気温を調べてみると、平年に比べて随分低い日が多かったことがわかりました。
出芽には温度が大いに関係しています。出芽の最適温度は16~28℃で、平均気温は21~22℃を保つのが望ましいとされています。広島市内では、5月の連休後半あたりから最高気温が22℃を超える日が続いたものの朝晩の寒暖の差は激しく、平均気温はなかなか16℃を超えませんでした。
バケツを理想の温度に近づけるべく、早速、空気の通る穴をあけたビニールですべてのバケツを覆いました。おかげで、出芽数は徐々に増えてきており、もうしばらくの間、気温に注意をしながら成長を見守ろうと思います。
「古代米づくり」を通し、あまり気に留めていなかった日々の気温の変化や、季節の移ろいを敏感に感じ取りながら、秋の収穫まで過ごしていきたいと思います。
文化財課学芸員 田原みちる/写真:小さなビニールハウスができました
「すごくらく」ではない極楽寺山!
2013.5.2
当文化財課では、フィールドワーク事業として、「歴史ハイキング」「遺跡ハイキング」などを行っており、昨年度は宗箇山、西山(牛田山)、松笠山(八畳岩)の三つの山に登りました。しかし、途中で山を登るのに四苦八苦する方があり、募集の段階で山に難易度☆ランキングを付けようとも考えましたが、山には、「距離は短いが坂が急な山」「距離が長いが楽な山」「滑りやすい山」などがあり、また基準となる山との相対評価が難しいことから単純な難易度☆ランキングだけでは判断が難く、難易度☆ランキングはあきらめました。なかなか難しいものです。
さて、今年5月25日に、坪井公民館と共催で極楽寺山ハイキングを行います。極楽寺山は頂上付近にある極楽寺見学などの文化財を見ながら歩けるなど遺跡ハイキングとしては見所満載ですが、標高693mで、最寄り駅の楽々園駅からの距離も長く、急な坂や滑りやすいところもあり、☆を付けるとすれば明らかに昨年度登った山よりも難易度☆が一つは多く付く山です。そのため、事業募集に際しては山に登りなれていない人には「きつい」とはっきり明示しなければならないと考えたのです。そこで、苦心惨憺の末、タイトルを「極楽寺山(693m)にのぼろう」とし、チラシにも「693mの山を登ります。全行程(登山道を含む。内約1キロ急坂があります。)約14キロを歩きます。健脚者向きの中級者コースのハイキングであることをご理解の上ご参加ください」といった具体的な文言を書いてみたのです。
いっぱい脅し文句を書きましたが、普通に運動している人は大丈夫ですので是非応募してください(往復はがき5月11日必着で申し込み・詳しくはイベント情報掲示板まで)。私は当日行きますが、始終(しじゅう)山に登っていますから楽勝です。年齢もしじゅう(四十)台ですから・・・
文化財課学芸員 玉置和弘/写真 極楽寺山の登山道(行き赤・帰り青)
文化財課園芸部始動!
2013.4.25
弥生時代といったら「米づくり」ということで、文化財課では2年前から古代米づくりを、昨年から江戸時代の高度な園芸文化を学ぶということで江戸の変化朝顔の講座を行ってきました。歴史を学ぶだけでなく実際に植物を育ててみると、より昔の人の生活・暮らしぶり・その心情までを実感でき、教科書では学べないようなことが身にしみてわかります。
これらの講座を行うため、当然企画する文化財課でも植物を栽培しなければなりません。4月を迎え、「いつ種をまけば・・・」「もう少し早くまいたほうが・・・」と今年の栽培スケジュールを検討しあい、作業服にゴム長・手袋・麦わら帽子というスタイル、同僚たちには「本当の農家の人みたい」といわれます(素人なのですが・・・)。 今年も害虫や病気を恐れ、生育状況に一喜一憂していく日々が始まっていきます。文化財課の玄関先では日々育ってゆく植物たちが見られるので、近くにこられる際は見てやってください。
文化財課学芸員 桾木敬太/写真 バケツ稲の土づくり。自慢できるバケツ稲を作りたい!
菜の花が咲きました
2013.4.18
春先の職場に花があったらいいなあと思って、文化財課倉庫の横の花壇に11月の終わりに北海道産の菜の花の種を植えてみました。植えたのが遅かったのと種からだったので4月に入ってやっと咲きました。もう花は散り始め、種ができ始めました。
江戸時代の夜を大きく変化させたのは菜種油でした。江戸時代以前から魚油や鯨油などの動物性油脂を燃やして明かりにすることはありました。中世の寺院では、仏前に灯明が供えられ、公家の家の室内ではごま油と荏油(えのゆ)が使用されていましたが、庶民まで普及することはありませんでした。
菜種油は「種油」「水油」と呼ばれ、綿実油の「白油」とともに、灯火油として広く使われました。はじめは油そのものに点火していましたが、やがて綿や藺草(いぐさ)からつくった灯芯で、効率よく灯すことができるようになりました。
この菜種油の行灯(あんどん)は、豆電球程度の明るさでしたが、夜なべ仕事や読書などができるようになり、1日の使える時間が広がりました。
植物もいろいろ歴史があって調べていくと知らなかったことがたくさん見つかります。
5月から、「江戸の園芸体験講座~変化朝顔~」が開催されます。(現在募集中。詳細はホームページのイベント情報掲示板をご覧ください。4月30日(火)締切り)植物から歴史を学んでいくのも楽しいですよ。ご参加お待ちしています。
文化財課主任指導主事 河村直明/写真 きれいに咲いた菜の花
- 2013.6.25
- 道悪の鬼
- 2013.6.17
- 「何でも駄洒落!」なコンビ
- 2013.6.3
- 宇津神社と船絵馬
- 2013.5.28
- アサガオと植木鉢
- 2013.5.20
- “弓矢特訓マシーン”を作ってみた!
- 2013.5.14
- 園芸部、早くもピンチ!?
- 2013.5.2
- 「すごくらく」ではない極楽寺山
- 2013.4.25
- 文化財課園芸部始動!
- 2013.4.18
- 菜の花が咲きました