学芸員が普段の仕事の中で感じたことや、日々のこぼれ話、お気に入りの展示物などを紹介します。

職場体験学習が行われました

2011.7.15

遺物実測の様子 7月5日(火)~7日(木)まで、職場体験学習が文化財課で行われました。体験学習をしたのは、広島市立早稲田中学校の3年生2名です。
 初日は、学芸員の仕事や文化財課の仕事の説明を受けた後、館内の収蔵室の見学をしました。収蔵室の遺物の数の多さに2人とも圧倒された様子でした。その後、埴輪作り・土器作りを行いましが、さすが中学生、小学生なら各々2時間以上かかるところを、ともに2時間かからずに完成しました。本物の埴輪の大きさや数の事を考えると、当時の人々の大変なパワーを実感したようでした。
 2日目は、白島小にある文化財資料室で、遺物の整理を行いました。データベースと遺物の報告書番号を照合していきます。2人とも汗だくになりながら頑張りました。資料整理という重要な仕事もあることを体験しました。その後、文化財課に帰り、火おこしを行い、おこした火と古代の復元土器を使って、古代米の炊飯を行いました。うまく炊けて、2人は古代米の食感がいいと何度もおかわりをしていました。ちょうど早稲田中の先生も様子を見に来られ、古代米を食べていただきました。
 3日目は、土器の実測を行い、作図した図面をコンピューターに取り込んで、トレースするまでの作業を行いました。2人は初めてのことで悪戦苦闘していましたが、職員の指導でなんとか完成させました。
 最終日の反省会の中で、二人の生徒にどれが一番楽しかった?と聞いてみると、どれも大変ためになったと言っていました。
 3日間で2人に「働く」ということについて実感してもらい、将来の進路選択に役立てて欲しいと思いました。また、考古学に興味をもってもらえれば嬉しいと思います。

文化財課主任指導主事 河村直明/写真:遺物実測の様子

平成23年度緑のカーテン「マクワウリ」

2011.7.7

マクワウリ 夏になったので、文化財課の前の花壇にも「緑のカーテン」なるものを作ってみることにしました。これまで、この花壇にはツタンカーメンのエンドウ豆・ゴーヤを植えてきましたが、今回はマクワウリを植えることにしました。今でこそあまり見なくなったマクワウリですが、古くから日本で育てられた食材でした。なんとマクワウリの種子は、弥生時代の遺跡やかっての都である藤原京跡・平城京跡から出土しており、古代から食べられてきた日本人にとってなじみのある食材なのです。
 その実はほんのりと甘く、まさにジャパニーズメロン!(英名はオリエンタルメロンなのですが…)さて、うまく育てることができるでしょうか。マクワウリの雄花

文化財課学芸員 桾木敬太/写真:はたしてネットで育つのか?/マクワウリの雄花

バケツで古代米づくりにチャレンジ!

2011.7.1

古代米 文化財課では、4月からバケツを田んぼに見立て、古代米作りにチャレンジしています。身近なところで稲の成長を見ることができるバケツ稲栽培は、多くの保育園や学校で食育の一環として取り入れられています。
 文化財課で育てているのは古代米で、「紫黒苑(しこくえん)」という品種の黒米です。古代米とは、厳密には古代の遺跡から発見される炭化した米や籾を指します。しかし、一般的には古代の稲の特徴を色濃く残す品種、例えば赤米や黒米といった色のついたお米や、香りのある香り米なども古代米と呼んでいます。古代米は、白米と比べて草丈が高く倒れやすい、収量が少ないといった欠点がある一方、病害虫に強いため、農薬や肥料を減らして育てることができます。また、栄養価も高いことから、健康志向の方に注目されています。
 バケツとはいえ、人生初の米作りを初めて3か月。小さな籾から日に日に大きくなっていく稲の成長を見守ることで、普段何気なく食べていたお米がもっと身近に感じられるようになりました。いろいろと失敗もありますが、秋の収穫を目指して頑張ります!

文化財課学芸員 田原みちる/写真:ずいぶん大きくなりました。※草丈約50㎝

出張授業とボランティア

2011.5.27

はにわ作り 文化財課では年間を通じて市内各小学校や公民館等の施設で出張授業を実施しています。4月下旬〜5月は6年生の社会科の授業で弥生時代や古墳時代を学習することから、小学校からの土器・はにわ等の「物作り体験」や弓矢・火おこし等の「古代体験」といった内容の授業依頼が寄せられます。今年も5月連休前後の約2週間は、毎日のように小学校に出かけました。子どもたちが楽しそうに活動している姿を見ているとこちらも嬉しくなります。
 私達が出張授業でお世話になっているのが、ボランティアの方々です。毎年、4月上旬には、ボランティア向けの物作りや古代体験の研修をしています。この研修にボランティア研修での作品は、これから始められる方からもう何年も経験されているベ
テランの方まで参加され、ボランティア同士の交流の場にもなっています。また、職員が考案中の新しい作り方について感想や意見を聞いたり、逆に教わったりすることもあるので、私達にとっても授業を進める上で大変参考になります。
 これからも、職員とボランティアはお互い「車の両輪」のような関係でありたいと思います。

文化財課指導主事 平岡啓二/写真:はにわ作りの様子/ボランティア研修での作品

江戸時代の人が見た可部古墳群

2011.5.13

青第4号古墳 安佐北区可部町の福王寺山南麓は、広島市で最も古墳が集中している場所です。その大半は、石室などの埋葬空間を造り、横方向に入口を設けた横穴式石室と呼ばれる埋葬施設を持つ古墳です。現在では、石室が壊れているものも多いのですが、盗掘などによって入口が開いて中に入ることができるものもあり、遺跡の中でも見つけやすいものになっています。
 江戸時代後期に広島藩が藩内各地を調べさせた記録「国郡志御用ニ付下調べ書出帳」には、これらの古墳についての記録があります。そこでは、「上ヶ原神代人穴」として記述が始まり、「穴」の様子は、入口があり、左右や奥は築地塀のような壁で、天井には石畳があると記述されており、横穴式石室のことを記していることがわかります。「穴」がある場所は野山や農民の私有林の中であり、山に入った人たちが石室を見る機会も多かったと思われます。では、当時の人たちが、「穴」をどうとらえていたかといえば、大昔の人の住居で、いつ頃のもので、何者が住んでいたかはわからないと書かれています。確かに入口があり、中に一定の空間がある横穴式石室は住居と見えなくもないし、石組の家に馴染みのない日本人から見れば、自分たちの先祖より昔の神世の人が住んでいたのだろうと想像したとしても不思議ではありません。可部古墳群で、先年発掘調査をした古墳の石室上からは寛永通宝が見つかっており、もしかしたら神世の昔の人へ向けての賽銭感覚で供えたものかもしれません。

文化財課学芸員 田村規充/写真:神代人穴?-青第4号古墳

23年度の文化財講座がはじまります

2011.5.6

縮景園 著名な研究者に歴史や文化財を学ぶ「広島の文化財講座」も、おかげさまで好評をいただき、4年目を迎えました。
 23年度の第一弾は「講座 松井教授に学ぶ『縮景園』」(6月5日実施)です。縮景園は、広島城と並んで広島を訪れる観光客(特に外国からのお客様)にとって定番スポットとなっています。でも、私たち広島市民にとってはどうでしょうか?「近くはよく通るけど・・・。詳しいことはちょっと。」案外そんな方が多いのではないでしょうか。そういう方にこそ、お勧めの講座です。講師は県立広島大学の松井輝昭先生です。申込締切が間近に迫っています(5月8日消印有効)。興味のある方は是非ご応募ください。
 7月には「三浦教授と行く歴史探訪バスツアー」、秋には 「古瀬教授と行く歴史探訪バスツアー」、12月には「講演会『異界・妖怪と日本人』」をそれぞれ予定しています。追って詳細情報をアップしていきますので、また文化財課のホームページをのぞいてみてください。

文化財課学芸員 荒川美緒/写真:名勝「縮景園」 迎暉峰から跨虹橋を望む

桜の季節です

2011.4.11

桜 桜の季節です。
 今から440年前、1571年の桜の季節、一人の老将が和歌を詠みました。「友を得て猶ぞうれしき桜花昨日にかはるけふの色かは」詞書によれば人々とともに花見を催していた際のものといいます。彼の名前は毛利元就。生涯を戦乱の世のうちに過ごした元就にとって、それは心和むひと時だったのでしょう。「皆が来てくれて桜が一層美しくなったよ」そこには戦国武将としてではなく、一人の人間としての姿が感じられます。3ヶ月後、元就は75年の生涯を閉じました。
 妻や息子たちへの愛とともに語られることが多い元就ですが、この最晩年の和歌の様に、残された資料には時に「友」という言葉も見受けます。若い頃から厚く信頼した志道広良、晩年の文芸仲間であった大庭賢兼といった存在からも、元就が立場を越えて人との絆を大切にしていたことが伺われます。厳しい時代にあって、その姿には学ばさせられるものがあります。
 大変な災害にみまわれている今こそ、心を一つに乗り越えて行かなくてはと思います。

文化財課学芸員 松田雅之

  
2011.7.15   
職場体験学習が行われました    
2011.7.7   
平成23年度緑のカーテン「マクワウリ」    
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2011.5.27   
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2011.5.13   
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2011.5.6   
23年度の文化財講座がはじまります    
2011.4.11
桜の季節です    
 

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