■新たな仏教のひろまり

 平安時代の初め頃に最澄と空海らにより伝えられた密教は、天皇や貴族など一部の人々たちにひろまり,病気や災難などを取り除くため,様々な加持祈祷が行われました。平安時代の終わり頃になると、念仏を唱えるだけで極楽浄土に往生できると言う浄土思想が伝えられます。
 鎌倉時代に入ると、念仏や題目を唱えることで救われるという浄土宗・浄土真宗・日蓮宗などが、急速に庶民の間にひろがって行きました。また、新しく支配階級となった武士たちは、修行や戒律の厳守を基本とする禅宗などを信仰しました。自分自身を鍛え、社会の秩序を維持する思想が、武士の気風とあいまみえ、政治上も都合が良かったためでしょう。

 

■木造如意輪観世音菩薩半跏像(広島市指定重要有形文化財)
 室町時代末〜桃山時代 円明寺(佐伯区)蔵

 円明寺は弘法大師が創建し、かつては西国一の大寺院であったと言い伝えられています。 お堂の中に安置されている本尊如意輪観世音菩薩は、きらびやかな宝冠や胸飾りを身につけており、室町時代末期から桃山時代頃の作と考えられています。

保存・転載禁止

写真提供:広島市市民局文化スポーツ部文化振興課 ※転載禁止

 

■(実物)金銅五鈷杵(こんどうごこしょ)(広島県重要文化財)
 室町時代初期 福王寺(安佐北区)蔵 

 五鈷杵とは密教の儀式に使う県法具「金剛杵(こんごうしょ)」の一種です。もともとは古代インドの武器であったと考えられ、両端には刃がついています。刃の数により独鈷杵(どっこしょ)・三鈷杵(さんこしょ)・五鈷杵などと呼ばれます。この五鈷杵は室町時代初期のものといわれ、県内では厳島神社にある五鈷杵の次に古いものとされています。

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写真提供:広島市市民局文化スポーツ部文化振興課 ※転載禁止

 

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