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■芸備孝義伝 三編(広島市公文書館蔵)
 冊子装 天保14年(1843)

 『芸備孝義伝』は、儒学者である頼春水・杏坪(きょうへい)兄弟らが、藩内で親孝行などの善行を行った者の伝記を編集したものです。享和元年(1801)に初編が出版され、二編(文化3年(1806)発行)、三編(天保14年(1843)発行)、拾遺(同年発行)の全35冊、830人以上が紹介されています。この場面は、荻路(おぎろ)村(現三原市長谷町)在住のしんが年老いた父との生活費を稼ぐため、綿打ちをしているところです。当時、綿の加工は分業で行われたため、農家の副業として重要な収入源でもありました。
 瀬戸内海に面した芸備地方では、沿岸部一帯にわたって干拓による新開造成が進められ、その環境に適した綿作が盛んに行われていました。収穫された綿は糸や織物などに加工され販売されていましたが、加工しない状態でも取引が行われました。江戸時代後期、広島藩の綿織物は「安芸木綿」と呼ばれ、「御国産第一之品柄」と称されるほどでした。

保存・転載禁止 芸備孝義伝

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