WEB博物館企画展第5弾 「ひろしまのお宝~広島市重要有形文化財考古資料編」

国人領主の城館跡で出土した際立った量の輸入陶磁器等
有井城跡出土品

 遺跡の時代・種類  南北朝時代~室町時代・山城跡
 発掘調査年   1991年5月~1992年3月
 遺物指定年月日  2004年7月22日
 所在地  広島市佐伯区五日市町石内

遺跡の概要
  有井城跡は、石内の谷のほぼ中央に位置し、石内川東岸の河岸段丘とその背後の独立丘陵を利用した中世の山城です。縄張は、段丘上の2つの郭を中心に、後方の独立丘陵に畝状竪堀群を持つ郭を配し、前方に大規模な薬堀状の水堀を巡らせたものです。 また、出土品からは14世紀から16世紀に及ぶ長期にわたって存続していたことも伺え、石内に本拠を置く国人領主小幡氏の居館城であったと推定されます。
  
  石内地区は、古代から山陽道が通る交通の要衝で、中世においては安芸武田氏・周防大内氏両勢力の境界線として多数の山城が築かれました。左端の矢印の位置にあるのが有井城跡です。
   
上空から見た有井城跡の全景(北から)    有井城跡全景図。一段高いところが第1郭。  
   
第2郭石垣及び通路状遺構(東から)  第2郭から発掘された 第2号井戸 

重要有形文化財の紹介
指定の理由 
 青磁や染付、天目茶碗など中国大陸からの輸入陶磁器類、土師質土器や瓦質土器、備前焼などの土器類、金銅製の鋲や飾り金具、鉄鏃や刀子・笄などの武器具類、大量の釘や毛抜き・古銭などの出土品が見つかりました。これらは、発掘調査された市内の他の山城と比べても際立っています。室町・戦国時代の国人領主の居館城と推定される山城跡から出土したもので、領主の経済力や当時の交易の様相、および居館における日常生活を知る上でも貴重な資料として、159点が広島市重要有形文化財になっています。内訳は磁器24点、陶器18点、土器32点、銅製品52点、鉄製品23点、鉛製品1点、石製品7点、土製品2点です。   
  輸入陶磁器
  
  大量に出土した輸入陶磁器 
   青磁の出土状況 
 
  14世紀後半(中国・元)、龍泉窯で作られた青磁の鉢。釉薬の厚みがよくわかります。 
 
  13世紀末~14世紀初め、龍泉窯(古)で作られた青磁の碗。ロクロ形成後、高台を削り出してます。(写真・左)
 14世紀後半(中国・元)、龍泉窯で作られた青磁の碗。ヘラ状工具で蓮弁文を描いています。  (写真・右) 
 
 16世紀中葉、龍泉窯で作られた青磁碗。いずれも内外面とも濃灰緑色の釉薬が施行されています。外面にヘラ状工具で蓮弁文を描いています。 
 
 12世紀前半(中国・南宋) の中国産白磁碗。底部外面を除き、内外面とも白色の釉薬が施されています
 
  14世紀~15世紀頃の中国製天目茶碗。ロクロ成形後、高台を削り出してます。
 
 16世紀の李朝井戸茶碗。全体に灰白色の釉薬が施されています。見込みには重ね焼きの跡があります。
  瓦質土器
  
 全体に煤が着いていることから、煮沸用の鍋として使用されたと考えられる瓦質土器。井戸の底から出土しました。  
  陶 器
 
 備前焼のすり鉢で、14世紀後半から16世紀初頭のものと考えられます。
  鉄製品
 
  金属の武器類です。右端は小札・上は刀子、その他は鉄鏃です。



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