うるしわん
漆椀
(広島城外堀跡紙屋町・大手町地点出土)
漆椀
 広島城の外堀跡から出土した漆椀の最大の特徴は、その形です。特に左側の椀の口径は、推定で12~14㎝程度、高さは少なくとも10㎝、高台(底の輪状の基台)の高さは3㎝ほどあります。いずれの椀も、我々が日常的に接している椀類とかなり異なり、「大きく」、「高台が高く」、「厚手」、といった特徴をもっています。
 こうした椀の特徴は、これまでの発掘調査事例による研究で、戦国時代末・安土桃山時代(16世紀後半)までのものと考えられています。つまりこの椀は、江戸時代より前の古い時代の椀のスタイルを色濃く残した形態といえ、広島城では16世紀末の築城の頃、堀毛利輝元時代に使用されていたものと考えられています。また、この椀の表面には漆が残っていましたが、残念ながら大半は剥離し、絵柄があったかどうかはわかっていません。
 木製品は石器や土器などと比べて腐りやすいため残りにくく、遺跡からあまり見つかりません。運よく現在まで残されるためには、炭化していたり、かなりの水気を含んでいたりするなどの条件が必要です。この椀が見つかった堀の跡は、埋め立てられても土に適度な湿り気があったことから、腐らずに残されたのでしょう。
【写真右:漆椀が出土した古い堀と石垣】


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