上根峠南西の向山本郷地区への登り道の途中、鍋割雄滝という見事な滝があります。前日の雨のお陰で水量も豊富でした。ここで上根峠を生んだ太田川支流の根谷川の侵食などを紹介しました。
田植えがすんだばかりの棚田が美しい向山本郷。ここはかつての簸川(上根峠の上の平地を北へ流れる江川支流)の上流部と考えられています。簸川とは、今では根谷川の峡谷で隔てられています。
明治時代に造られた上根峠を越える県道に敷かれ、近年地元で再現された石畳を前に、上根バイパスの開通でその記憶も遠ざかりつつある、難渋を強いられた上根峠越えの交通史を説明しました。
上根峠の最上部に堆積した旧簸川の河床礫層。根谷川に河川争奪を受けた簸川は水流を失い、それまで簸川が運んできた礫の堆積層が残されました。争奪が起きたのは50万年とも100万年ともいわれる大昔。自然と人とでは時間の尺度が全然違うのです。
上根峠の北東の小高い場所から、上根峠一帯を展望しました。突然平地が途切れ渓谷に落ち込む様子や、午前に登ってきた向山本郷を南西に見渡し、壮大なる河川争奪の空間を体感しました。
上根峠の上は瀬戸内海側に流れる太田川水系と日本海側に流れる江川水系との分水嶺です。二つの水系が接するここ上根や安芸高田市向原町では、前者による河川争奪を物語る様々な証拠が残されています。講師はそうした地形の成り立ちを読み解く面白さについて熱心に語られました。