学芸員が普段の仕事の中で感じたことや、日々のこぼれ話、お気に入りの展示物などを紹介します。
「広島藩の一里塚と一里の長さについて」
2026.5.15
江戸時代、主要な街道には一里塚が設けられ、旅人が道のりを知る目安となっていました。その名のとおり一里塚は概ね1里ごとに設けられていましたが、江戸時代の1里の長さは地域で異なっており、同一藩内でも異なる場合がありました。
安芸・備後両国(広島県)における一里塚については、毛利輝元が広島城主だった天正20年(1592)に、備中高梁川から肥前名護屋城まで36町(約4.3km。1間6尺5寸で計算。以下、同じ)ごとに一里塚が築かれたという記録(「豊臣秀吉九州下向記」)があり、これが最も古い記録のようです。これに次いで古いのが、浅野長晟が広島城主だった寛永10年(1633)の記録で、幕府巡検使下向に備えて広島藩内の一里塚が整備されたこと、その際の1里は36町だったことが確認できます(「玄徳公済美録」巻四上『新修広島市史 第1巻 総説編』)。
しかし、江戸時代中期に萩藩が作成した街道絵図『行程記』(山口県文書館蔵)によると、同時期の広島藩の西国街道では、36町1里だけでなく48町(約5.7km)1里あるいは50町(約5.9km)1里の区間があったことが確認できます。また、48町1里の区間に位置した、御調郡三原城下西町の西ノ宮一里塚(三原市西町)については、厳密に48町間隔にすると三原城内に位置するため、あえて西へ6町ずらして設置されており、東西それぞれ次の一里塚までの間隔が、東は54町、西は42町という特殊事例もあったようです。さらに、江戸時代後期の紀行文には、70町1里、72町1里の区間の存在を窺わせる記述もあります(「小春紀行」「塵壺」)。
なお、お隣の福山藩と萩藩の場合、西国街道は36町1里であり、山陽地方西部諸藩のなかで広島藩のみが統一されていませんでした。残念ながらその原因については明らかになっていませんが、今後の研究の進展に期待したいと思います。
明治時代になると一里塚は不要とされ、明治9年(1876)に政府は、調査の上「有害無益」の一里塚は廃棄し入札によって民間に払い下げよ、と各府県へ通達しました(「百二十号街道一里塚ノ内有害無益ノ分総テ廃毀」)。これにより、一里塚の廃止が進み、多くが取り壊されました。今日、広島県内の旧西国街道では一里塚がそのまま残されている場所はありませんが、移築復元されたものがあります。また、一里塚跡を示す石碑が建てられている場所も多くあります。みなさんも一里塚の痕跡を訪ねてみませんか。
参考文献
川村博忠「近世道中絵図『行程記』の内容と成立時期」『山口県地方史研究』第55号 山口県地方史学会 1986
山田 稔「近世街道絵図「中国行程記」について」『山口県文書館研究紀要』第41号 山口県文書館 2014
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| 移築復元された日向一里塚 |
小己斐山一里塚跡石 |
| 東広島市西条町上三永所在。東広島呉自動車道建設に 伴って発掘調査が行われ、その後、元の場所から西へ 60m程離れた側道脇に移築復元されました。 |
広島市西区井口鈴が台1丁目(鈴が台第三公園脇)所 在。佐伯郡井口村の小己斐山一里塚の跡地に建てられ た石碑。 |
文化財課主任学芸員 篠原 達也
「新年度スタート!」
2026.4.16
新年度がスタートしましたね。環境が変わった人も変わらなかった人も、少しだけ背筋が伸びる季節ですね。本年もこのコーナーでは、歴史・文化に関することや職員が興味を持っていること、文化財課のお仕事のことなど、さまざまなひとことを発信していきますので、引き続きよろしくお願いします!
さて、今年度、第一弾の「学芸員のひとこと」は、当課のイベント情報をご紹介します。当課では、毎年4月29日に安佐動物公園にて、「鹿角ストラップづくり」を実施しています。この事業は安佐動物公園と共同で開催しており、毎年たくさんの来園者のみなさまに参加していただいています。
当課は、市内の遺跡の発掘調査を行っている部署ですが、遺跡からは動物に関連する物がたくさん出土しています。これらの出土品からは、単に古くから動物と人間が共存していたということだけではなく、当時の人々の暮らしぶりがどのようなものだったかを窺い知ることができます。
このイベントでは、鹿角をカットしたプレートとビーズを使ってストラップを作る体験や、発掘調査によって出土した動物の骨や狩りの道具、動物を模した土人形などの紹介を行います。このイベントをきっかけに、古くから続く人と動物との関わりについて、少しでも興味をもってもらえるとうれしく思います。
文化財課では、このように歴史や文化に関するイベントを多数実施しています。当課が実施するイベント情報は、ひろしまWEB博物館のイベント情報掲示板や公式Instagramで紹介しておりますので、定期的にご確認ください。また、当施設のアカウントをフォローされていない方は、ぜひフォローしてくださいね!
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| 昨年度の様子 | 埋蔵文化財保存活用施設Instagram |
文化財課学芸員 日原 絵理
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